みず


 ポタリ。


 黄色の着色材が、水の入ったグラスに落とされた。


 極めて微量である。
 薄く尾を引いて溶けていく。
 色など、着くか着かぬほどだ。
 水を入れた人物が親しかった場合、差し出された者はいかなる疑念も抱かずに飲むだろう。
 わずかな量であるから、口にした場合果たしてどうなるか。飲んだ者の身体によるのか、と考える。
 ――試してみようか。
 もちろん実際試す事はない。思案するだけだ。それで、どこか満たされる。


 呼び鈴がなったので、用事を足しに行く。




 宅配だった。
 荷を持って戻ると、グラスが横たわり水がテーブルから滴っていた。
 荷物が、ゴトリ、と音を立てた。



(原)2010/07/03 (編)2010/09/26