an extra.



 「吐きそうだ…」
 隣りに座る森崎が口を押さえていた。
 電光掲示板の前は独特の雰囲気に包まれている。僕たちは、免許の更新に来ている人波を横目に待合室で待機していた。
 「俺も。待ち時間がツラい」
 「中山もか……実技試験はうまくいったんだけどな……」
 「学科もやれる事はやったつもりだけどな」
 「マジか。こっちはやり残した感いっぱいだよ……」
 「森崎は心配性だな」
 「むしろ落ち着き過ぎだろ、中山。もうお前ジャスコにでも行けよ……!」
 「わかったわかった。ココアやるから落ち着け」
 「森永じゃねぇよ……!てか今ツッコミして欲しかった!」
 森崎が焦れったそうに顔をしかめた。そして、発表を知らせるアナウンスが流れ、森崎のしかめた顔が固まった。

 「……うわぁぁ……やべぇよマジやべぇよ。頭真っ白。見たくねぇ」


 森崎は受験票を確認し始める。
 僕は、記憶していた番号と掲示板の番号を照合する。念のために受験票も確認した。

 「あるある。森崎、何番?」
 「え、マジ……!?オレ、オレは……あ、あったぁぁ!やりましたぁ!森崎選手!よし、さあ行くぞ!中山!祝杯だ!」
 「おいおいおい、まだ手続きあるから落ち着け」


 その後、森崎は顔を輝かせながら書類を握り締めていた。
 僕は、三年間使う予定の写真に備え、前髪を指先で整えて、筆記試験で疲れた目をぱちぱちとさせた。




(原)2009/09/18 (編)2010/12/11